妊娠中でも安心!ママと赤ちゃんを守る歯科治療ガイド #26|岡崎市の歯医者|三浦歯科

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妊娠中でも安心!ママと赤ちゃんを守る歯科治療ガイド #26

はじめに

「赤ちゃんができたら歯医者さんはしばらくお休み」
──そう思っていませんか?


 実は妊娠期こそ、お口の健康管理が母子の健康を守る大切な鍵になります。

つわりで磨きにくい、食事回数が増える、ホルモンバランスが変わる…

これらはむし歯や歯周病を進行させやすい環境です。


さらに歯周炎が早産や妊娠高血圧症候群と関連する可能性も示唆されています。


安心して通院するために、妊婦さんが知っておきたいポイントを6つに絞ってわかりやすく解説します。




1.妊娠期ごとの治療スケジュール

時期

からだの変化

歯科治療の考え方

妊娠初期
(0〜15週)

胎児の主要臓器が形成される最も敏感な時期。つわりが強いことも。

緊急を要する治療のみ。痛みや腫れは我慢せず相談を。レントゲンや薬は必要最小限に抑える。

妊娠中期
(16〜27週)

体調が安定し、仰向けも比較的楽。

定期検診・クリーニングやむし歯治療に最適。局所麻酔も通常量なら安全。

妊娠後期
(28週〜出産)

お腹が大きくなり、長時間仰向けで気分不良(仰臥位低血圧症候群)が起こりやすい。

短時間の処置にとどめ、右腰の下にクッションを入れて左側に傾けてもらうと安心。出血を伴う外科処置は原則延期。


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2
.X線撮影による被曝リスク


「レントゲンを撮ると赤ちゃんに悪影響は?」と不安になる方が多いですが、一般的な歯科用レントゲン(口腔内・パノラマ)の実効線量は0.02 mSv程度。国際放射線防護委員会が「リスクは考慮不要」とする100 mSvの1/5,000以下で、しかも照射部位は子宮から離れています。CBCTでも最大約1 mSvに過ぎません。鉛エプロンは散乱線がほぼ無いので学術的には不要ですが、心理的な安心材料として用いる歯科も多いです。


こんなときは必ず相談

  • 妊娠週数が4〜10週でどうしても撮影が必要
  • レントゲンに強い不安がある
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3.薬剤(お薬)のリスクと上手な付き合い方

シーン

第一選択

注意したい点

痛み・発熱

アセトアミノフェン

通常量・短期間使用は安全。NSAIDsは28週以降禁忌(胎児動脈管収縮)。

感染予防(抗菌薬)

ペニシリン系・セフェム系

テトラサイクリン系は歯の着色、キノロン系は禁忌。

うがい薬

クロルヘキシジン

ポピドンヨードは長期・広範囲使用を避ける。



覚えておきたいベースラインリスク

すべての妊娠には約3%の先天異常、約15%の自然流産という“もともとのリスク”があります。薬を飲んだから必ず異常が起こるわけではありません。心配なときは「どの週数で」「何を」「どれくらい」飲んだのかメモして、歯科医・産婦人科医と情報共有しましょう。

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4.局所麻酔は大丈夫?

  • リドカイン+エピネフリン:通常のカートリッジ2〜3本までなら安全性が高いと報告されています。胎盤通過はするものの、治療で必要な量では胎児への影響は確認されていません。

  • フェリプレシン入り麻酔:子宮収縮を招く可能性があるため特に後期は避けます。

  • 麻酔後すぐの授乳:気になる方は治療前に授乳し、投与後2時間ほど空けるとさらに安心です。

痛みの我慢はストレス
強い痛みは血圧上昇やストレスホルモンの分泌を招き、かえって母体に負担がかかります。適切な麻酔で痛みを抑えることは、赤ちゃんにとってもプラスです。


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5.歯科受診前後のチェックリスト

  1. 母子手帳を持参:妊娠週数・既往歴・服薬状況を書き込んでおく。
  2. 体調の良い時間帯を予約:つわりが軽い午前中など。
  3. 診察姿勢の希望:後期は左側に傾けてもらう等リクエスト。
  4. 薬のリストを共有:市販薬やサプリも含めメモ。
  5. 不安はすぐ質問:レントゲン、麻酔、投薬…「こんなこと聞いていいのかな?」と思わずに相談を。

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6.妊娠中に起こりやすいお口のトラブルまとめ


妊娠中はホルモンバランスの大きな変化により、全身のさまざまな部分に変化が現れます。実はお口の中もその影響を強く受けており、次のようなトラブルが起こりやすくなります。


1.妊娠性歯肉炎(にんしんせいしにくえん)

妊婦さんの約50〜70%が経験すると言われる、もっとも一般的な症状です。
妊娠中に増加するエストロゲンやプロゲステロンが歯肉の毛細血管を拡張し、炎症を起こしやすくします。

特徴

  • 歯みがき時に出血しやすい
  • 歯ぐきが赤く腫れたり、ブヨブヨする
  • 痛みが強くないため放置されがち

POINT:進行すると「妊娠性歯周炎」へ移行し、早産や低体重児出産のリスクが上昇すると報告されています(Offenbacher et al., 1996)。


2.つわりによる歯みがき困難

妊娠初期のつわりで、特に歯ブラシを奥まで入れると「オエッ」となりやすい方は多く、口腔ケアが不十分になりがちです。

工夫例

  • 小さいヘッドの歯ブラシを使う
  • 香料の少ない歯みがき粉に変える
  • 吐いた後はすぐ歯みがきせず、まずうがい

3.むし歯リスクの上昇


妊娠中は以下のような要因で、むし歯の原因菌が繁殖しやすくなります。

  • 食事回数の増加(間食も含め)
  • 唾液の分泌減少
  • 胃酸による口腔内の酸性化(嘔吐や逆流)

予防のコツ

  • キシリトールガムを活用する
  • 水分補給をこまめに
  • 寝る前のブラッシングは丁寧に

4.妊娠性エプーリス(良性の歯肉腫瘤)


妊娠中期~後期にかけて、歯ぐきに赤く柔らかいしこりのようなものができることがあります。これは「妊娠性エプーリス」と呼ばれ、良性の腫瘤です。


注意点

  • 出血しやすいが痛みは少ない
  • 出産後に自然に小さくなることも多い
  • 大きくなる場合は歯科医へ相談を


5.ドライマウス(口腔乾燥)


妊娠による体内の水分バランスの変化や、呼吸の変化で唾液の分泌が減少する方も。


対策

  • ガムや飴で唾液の分泌を促す
  • 水分補給を意識的に行う
  • 就寝前に保湿ジェルを使うのもおすすめ



まとめ


妊娠中の歯科治療は、「正しい時期に、必要な処置を、エビデンスに基づいて安全に行う」ことがポイントです。

  • X線撮影の被曝は極めて低く、エプロン併用でさらに安心
  • 決められた薬を短期間・適量で使えばリスクは最小限
  • 中期は最も治療に適した“ゴールデンタイム”
  • リドカイン麻酔は通常量なら心配無用


お口のトラブルを放置すると、産後の忙しい時期に悪化し治療が長引くことも。気になる症状がある方は、遠慮せず歯科医に相談してください。ママが笑顔で過ごすことが、赤ちゃんへの最高のプレゼントです。


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参考文献

・上野繭美・里村一人「妊産婦および授乳期における歯科治療と薬物療法」歯薬療法 42(2), 69-74, 2023.
・髙松潔・宮田あかね「妊娠中の患者に対する歯科治療上注意すべき点」歯科学報 113(1), 87-90, 2013.