CAD/CAM冠って実際どうなの?  ―歴史・素材・成功率と失敗例、海外事情まで患者さん目線で本音解説― #27|岡崎市の歯医者|三浦歯科

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CAD/CAM冠って実際どうなの? ―歴史・素材・成功率と失敗例、海外事情まで患者さん目線で本音解説― #27

CAD/CAM冠って実際どうなの?

歴史・素材・成功率と失敗例、海外事情まで患者さん目線で本音解説―


  1. はじめに

「白くて金属アレルギーの心配が少ない保険の被せ物がある」と聞くと魅力的ですよね。そこで今回は、2014年に保険導入されて以来ぐんぐん普及している CAD/CAM冠 を、あえて“良いところも悪いところも”まとめてみました。


  1. 歴史的背景 ― なぜ生まれた?

  • 1907年に鋳造法が歯冠補綴に導入されて以降、金属冠が主流でしたが、 金銀パラジウムの高騰 と金属アレルギーへの配慮が課題に。

  • そこで登場したのが、コンピューターで設計・ミリングする CAD/CAM技術。日本では先進医療を経て 2014年4月から小臼歯で保険適用、その後大臼歯・前歯へと拡大しています。

  • 保険適用直後は金属冠が約75%でしたが、わずか1年でCAD/CAM冠が15%へ増加。現在は小臼歯装着件数の約4割を占めるまでに普及しています。

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  1. 素材 ― “レジンブロック”って何?

  • 高圧・高温で重合させたハイブリッドコンポジットレジンを立方体ブロックにし、機械で削り出すのが特徴。内部まで均質なので従来のレジンより強度と滑沢性が向上しています。

  • 含まれるフィラー(ガラスやシリカ)の割合は60–80wt%と高く、樹脂だけのレジンジャケット冠よりずっと頑丈です。ただしセラミックスや金属よりは軟らかいため、長期的な摩耗や変色のリスクがあります。
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  1. 成功率・失敗内容とその原因

代表的研究

観察期間

生存率*

成功率(=脱離なし)

主なトラブル

Mine ら(109冠)

3年11か月

96.4%

77.4%

脱離 19.3%/破折1.8%

髙江洲ら(125冠)

最長5年10か月

93.6%

88.8%

脱離 11.0%/破折0%

アンケート調査(1,178冠)

1年8か月

脱離 24.5%(43.8%が装着1か月以内)

*生存率=再装着含め口腔内に冠が残存した割合


ポイント

・破折は非常に少なく、トラブルの8〜9割が「外れてしまう(脱離)」こと。
・脱離の 約半数が装着後6か月以内に集中し、その後は発生ペースが緩やかになります。

・接着指針をきちんと守った群は、守らなかった群より成功率が13%以上高いことが示されています。


主な失敗の原因

  • 支台歯の形態不良(テーパー不足、咬合クリアランス不足)
  • クラウン内面・歯面の接着処理不足(サンドブラストやシラン処理の省略)
  • セルフアドヒーシブセメントのみ使用で接着力が不十分
  • 強い歯ぎしり・食いしばりや調整不足の咬合

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  1. 海外との違い ― とくに“外れやすさ”は?

  • 一般的なオールセラミッククラウンの脱離は5年で7%、メタルボンドでは0.6%程度。(Sailer I, 2015)

  • 一方、日本のCAD/CAM冠は脱離率は、海外より高く、これはCAD/CAM冠自体の材質に起因した問題が存在すると考えられています。

  • 海外ではレジンブロックの治療は『一時的』な治療に用いられ、最終的な治療に使用するような材料ではありません

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  1. 患者さんに知ってほしい注意点まとめ

    ・“外れる”リスクは金属冠より高め。装着後半年はとくに注意し、違和感やグラつきを感じたら早めに受診しましょう


    ・強い噛みしめ・歯ぎしりがある方
    は脱離率が上がるため、治療自体を推奨できません

    ・費用が抑えられるのがメリットですが、長期の色調安定性や耐久性ではジルコニアなど自費セラミックスに大きく劣ります。




  1. まとめ ― 少しネガティブに言うと…


CAD/CAM冠は「金属を使わず、見た目が自然で、保険でもできる」夢のような治療に思えます。しかし現実には 外れるリスク”という弱点がつきまといます。とくに装着初期の接着の技術に大きく左右される治療法です。

だからこそ

  • CAD/CAM冠の経験が豊富で、接着手順を徹底している歯科医院を選ぶ
  • CAD/CAM冠は『脱離することを前提として』治療を受ける
  • 金属冠(金銀パラジウム合金)とメリット・デメリットを比較し、選択をする
  • 装着後もメンテナンスに通い、早期発見・早期対応を心がける


これらが治療の満足度を左右します。「白い被せ物=何でも安心」ではないことを知った上で、あなたに合った治療法を一緒に考えていきましょう。


特にCAD/CAM冠が外れたら対応すれば大丈夫という短期的な観点ではなく、再治療で介入する際には状況によって歯を削らないといけないため、何回も治療介入することで歯の寿命が縮みます。

長期的な観点で、歯の保存を考える場合には保険“外”の治療が第一選択になります。


引用文献一覧

  1. 新谷明一, 峯篤史. 保険CAD/CAM冠の保険導入からみた補綴装置としての臨床評価と課題. 日本歯科医療管理学会雑誌, 2017.

  2. 峯篤史. CAD/CAM冠の現状と今後の展望:支台歯形成と脱離予防対策を中心に. 日本歯科技工学会雑誌, 2022.

  3. 髙江洲 雄, 松浦 尚志. 保険CAD/CAM冠装着後の臨床経過の調査―125症例の後方視的研究. 日本歯科保存学雑誌, 2021.

 

【文責:歯科医師・歯学博士 三浦 基】

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