今回はインプラントに関する構造や、材質の特性、クラウン(被せもの)の固定方法について分かりやすくご説明します
目次
◾️インプラントの構造はどうなってるの?
インプラントは主に3つの部分から構成されています。
・インプラント体:骨に埋まる部分
・アバットメント:土台の部分
・上部構造:被せ物部分
このような3つの機構に分かれることで、各部での問題が生じた場合にはパーツの交換が可能であったり、被せものを作る際に自由度が効いたりと利点の多い構造となっております。
◾️インプラントはチタンのネジ?
インプラントを簡単に説明すると、その形状から『チタン製のネジ』であると表現できます。
これは木板にネジを固定するのと同じように、手術で骨にインプラントを固定します。
ネジの形状はインプラントと骨を嵌合させ、骨の中で動かないように安定させるためです。
インプラントの成功の1つは、この“固定”が重要であると言われており、様々な形状のインプラントが開発されています。
インプラントの安定は、初期安定と二次安定の2つ存在します。
初期安定(Primary stability)… インプラントと骨の嵌合による安定(機械的な安定)
二次安定(Secondary stability)… 骨の治癒による二次的な安定(Osseoointegrationの獲得【前回を参照】)
骨折で骨が治るように、インプラントと骨とのギャップもしっかりと治癒し、インプラントの安定をより強固にします。骨の治癒過程でインプラントの安定が一時的に落ちる時期もあり、術後はより注意すべきです。(Stability Dip , Raghavendra et al. 2005)
各メーカーではインプラントの表面を改良して、インプラント表面の骨治癒を早めること、つまり二次安定を早める取り組みをしています。
◾️インプラント材料であるチタンの物性
チタン(Ti)は原子番号22番の元素で、軽量 / 高強度 / 耐食性 / 耐熱性 / 生体適合性という性質を持っています。お口の中は高温多湿な厳しい環境であり、耐食性や高強度であることはチタンという物質を安定に保つために重要な項目となります。実際にはチタンの表面は空気中の酸素と結合し酸化チタン(TiO2)として存在しています。この酸化チタンは非常に溶けにくいため(イオン化しづらい)、金属アレルギーも引き起こしづらい材料とも言えます。
◾️クラウン(被せもの)の固定方法
被せものは主に2つの方法で固定されます。
A スクリュー固定 … ネジで固定します。トラブルがあれば外すことが可能です。
B セメント固定 … 歯科用セメントで固定します。外すのが難しい場合もあります。
一般的にはスクリュー固定が選択されますが、インプラントの入れる方向が難しい場合は、セメント固定も選択されます。どちらもメリット・デメリットがありますが、セメント固定の場合は外すことが困難となる場合もあり、問題が起こった時には被せ物を壊さないといけないケースもあるため注意が必要となります。
◾️インプラントの表面性状
現在のインプラント表面を拡大していくと表面はザラザラしています。その荒さの程度は、中等度の荒さ(moderately rough surface)のインプラントが一般的となっています。歴史的な変遷を紹介すると、インプラントの当初である1960年代から1990年代までは機械仕上げの表面であり、表面がツルツルしたインプラントが一般的でした。汚れが付着しづらいなどの利点もある一方で、オッセオインテグレーションが得られる期間が長くなる(=治癒期間が長い)、早期失敗の確率が高いなどの欠点も多くありました。1990-2000年には、各社様々な表面性状が開発され、粗めの表面性状が主流となり、その後2000年以降は現在の中等度の荒さへと落ち着きました。
この荒さの変化に応じて、血液の付着や骨形成に有利な表面となり、前述したように治癒期間は3-6ヶ月から6-8週へと短縮されました。
◾️各社のインプラント表面性状の発展
より治癒期間の短縮を目指して、表面のぬれ性に着目しました。ぬれ性とは、材料の表面に水滴を垂らして、その水滴が広がっていくことをぬれ性が高い、つまり親水性(しんすいせい)の材料と表現します。反対に、水滴がそのままの形を維持することをぬれ性が低い、疎水性(そすいせい)の材料と表現します。
包装から開けた際のインプラント表面は純チタンですが、すぐに外気の酸素と結合し、酸化チタンとして安定します。酸化チタンは疎水性であり、血液との接触を妨げるため、治癒に不利な特徴となります。
当院が使用しているStraumann社のインプラントでは、SLActive®︎というより親水性の高い表面性状を開発しており、オッセオインテグレーション獲得までの期間を3-4週へとさらに短縮させました。(Straumann社HPより)
文責:歯科医師 / 歯学博士 三浦 基
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