インプラントを失敗しやすい人は?インプラント治療の適応・非適応って?【岡崎市の三浦歯科】|岡崎市の歯医者|三浦歯科

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インプラントを失敗しやすい人は?インプラント治療の適応・非適応って?【岡崎市の三浦歯科】

 まず初めにインプラント失敗に関しては、インプラント上部構造が緩んだ、インプラントを支える骨が吸収したなど様々ありますが、今回は『インプラントの喪失・脱落』しやすい要因についてお話ししていきます。

 

◾️身体の状態からインプラントをしてはいけない人

 『口腔インプラント治療指針2020』(口腔インプラント学会のガイドライン)からの抜粋となりますが、治療をしてはいけないケースを“禁忌”と表現します。禁忌は絶対禁忌と相対禁忌の2つに区分されます。



絶対禁忌 … 病状の改善が望めない疾患を有する

相対禁忌 … 状態が改善されれば適応症として扱うことが可能



(絶対禁忌)重症心臓病,先天性血, 液凝固因子欠乏症,腎透析患者,末期の悪性腫瘍患者, 口腔清掃ができない運動麻痺

(相対禁忌)コントロールされていない感染症や糖尿病,高血圧症



 上記がガイドライン上で列挙されている病気であり、該当の病気を持つ患者様へのインプラント治療の適応は注意が必要となります。相対禁忌に関しては、病状が良くなればインプラント治療が可能となるため、かかりつけ医と連携しつつ、治療を進めていくことが必要です。




◾️インプラント治療に注意が必要な薬は?インプラントが喪失するリスクが上がる!

 インプラント治療が失敗するリスクが上がる薬剤として2種報告されていますので、術前に確認する必要があります。



  • プロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitors ; PPIs)

胃内において胃酸分泌を抑え、胃潰瘍などを治療し逆流性食道炎に伴う痛みや胸やけなどを和らげる薬となります

 

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective serotonin reuptake inhibitors ; SSRIs)

 脳内の神経伝達を改善し、意欲を高めたり、憂鬱な気分などを改善する薬です



 どちらもインプラントのOsseointegration(前項を参照→)に阻害すると言われています。服用している患者様ではPPIsは4.3%、SSRIsは7.5%のインプラント失敗率となります(Vivianne Chappuis, Systematic review 2018)






◾️タバコ(喫煙)とインプラントって?その影響は?

 タバコはニコチンによる副作用で、お口の粘膜の血管収縮が起き、インプラントを埋めるために削った骨の治癒に影響すると言われています。具体的には20本喫煙をされている方だと インプラントの失敗が4倍 に上がると言われています。(Implant based; RR: 2.45, Patient based; RR: 4, Roohollah Naseri, 2020, Systematic review)

そのため当院では禁煙のプロトコールをしっかり遵守いただいた上でインプラント治療を受けていただいております。





◾️失敗しやすいインプラントの部位 

 骨の質や密度は、部位によって一定ではなく変化します。特に上顎の臼歯部(奥歯)は最も失敗しやすい部位と認識されており、その理由は骨密度が疎であることに起因します。

 
 

 骨密度って?

 骨の単位面積あたりの骨塩量で、骨の強さやつまり具合を評価する指標です

 
 

 CT検査をすることで、骨密度の違いは色の濃淡で示されるため、インプラントを埋入する部位の失敗リスクが高いかどうか判断可能となります。

 

 

◾️インプラントと骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は?

 

 骨の代謝が崩れて生じる骨粗鬆症も影響はあるのでは?

 

 もちろん、骨の代謝が落ちていたりすることで、インプラントと骨のオッセオインテグレーションには負の影響を与えます。

 

 しかしながら、骨粗鬆症のある被験者と健常者を比べた際に、インプラント残存率に差は無かったという報告もあり(de Medeiros , 2018)、骨粗鬆症がインプラント治療の禁忌とはなりえません。


 

インプラントと薬物関連顎骨壊死(MRONJMedication-Related Osteonecrosis of the Jaw)に関して

 

骨代謝に影響するような薬を飲まれている場合、顎骨が部分的に壊死し、露出するような顎骨壊死を生じる可能性があります。薬物に関連して発症するため、薬物関連顎骨壊死(MRONJ:Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw)という病名になります
 
 

抜歯をした際に生じる確率は、BP(ビスフォスフォネート製剤)だと0-0.15%、デノスマブだと1%程度と言われています。

 
 

処方薬、投薬期間によってMRONJ発症のリスクは異なるため、歯科治療の前に病状に関して医科への照会が必要です。

 
 

治療に際しての、休薬の必要性がたびたび議論となりますが、『休薬による有用性を示すエビデンスは存在しないため、休薬は原則不要である』という見解が一般的です。(顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023より)

 
 

米国口腔顎顔面外科学会(American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons:AAOMS)の2022年ポジションペーパーからは、『インプラント治療によるMRONJ発症リスクは低く、長期的なメンテナンスを下になされるべき』と結論づけられています。



 

◾️インプラントと糖尿病は?

 

糖尿病は、血液中の糖(グルコース)が過剰となる病気で、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに異常を生じます。

 

 高血糖の状態は、身体にとって悪影響で、コラーゲンやオステオカルシンなどの歯茎・骨の補修に必要なタンパク質を減少させます。

 

 結果として、治療後の治癒不全を生じたり、感染しやすい状態になったりもします。

 

 インプラントと糖尿病の関連性は、インプラントの残存率は健常者と同じですが、インプラント周囲の骨喪失を生じやすい傾向にあります(Chrcanovic, 2014)

 

 また糖化ヘモグロビンの割合を示しているHbA1cの値が大きいほど、インプラント周囲の出血を生じやすい、つまり炎症を起こしている状態であると報告されています(G Gómez-Moreno, 2015)

 

 日本口腔インプラント学会の治療指針では、インプラント埋入する場合には『空腹時血糖 140 mg/dL 以下,ケトン体(-),HbA1c:6.9%(NGSP 値)未満』に糖尿病の状態をコントロールしなければならないと結論づけています。







文責:歯科医師 / 歯学博士  三浦 基

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